

各種大気圧プラズマ装置

大気圧プラズマとは
弊社の装置に採用しているプラズマは、真空容器や反応用ガスの充満といった特殊な環境を必要とせず、常圧大気中で発生することができる大気圧プラズマです
イラスト 春犬
プラズマとは・・・
プラズマとは、固体・液体・気体に続く「物質の第4の状態」と言われ、高いエネルギーを持った気体原子の状態です
気体に非常に大きなエネルギーを与えると、原子のまわりを回っている電子が活性化し、さらにエネルギーが増すと、電子は原子核の束縛から離れて外に飛び出します
この高エネルギー電子が周囲の原子に衝突すると、連鎖的に電子が飛び出し、この現象はエネルギーが減衰するまで広がっていきます
電子を失った原子は「プラスイオン(+イオン)」となり、非常に活発で不安定な状態になります
この「電離した原子(イオン)と、ほぼ同数の電子を含む気体」の状態を総称して「プラズマ」と呼びます
プラズマは+イオンと−電子が混在していますので、全体としては電気的に中性であることも特徴です
また、プラズマ状態の原子が元の安定状態に戻ろうとする際、周囲の物質と様々な化学反応を起こします
産業用プラズマの種類
プラズマは、元となる気体に電気エネルギーやマイクロ波などを与えて生成します
産業用途では、主に次の2種類が用いられます
● 熱プラズマ
直流電圧を与えて継続的に発生させるプラズマです
数千~数万度の超高温と高ガス圧を利用し、主に金属の溶断や溶射などに使用されます
● 低温プラズマ
パルス電源などを用いてガスの温度上昇を抑えたプラズマです
高い化学反応性を持ちつつ、素材を傷めにくいため、幅広い分野で活用が広がっています
従来型(真空・減圧)プラズマの課題
従来の低温プラズマは、真空状態で処理ガスを導入して発生させる「真空プラズマ装置」が主流でした
高い処理精度を持つ一方で、以下の課題がありました
• 真空チャンバー、真空ポンプなど大掛かりな設備が必要
• 処理ごとに減圧が必要なため、時間と工程がかかる(バッチ処理)
• 高額な設備投資が必要で、半導体製造など付加価値の高い用途に限定される
大気圧プラズマの登場とメリット
近年、減圧を行わずに大気中で安定してプラズマを発生させる技術が確立されました。
これが「大気圧プラズマ」です。産業利用の裾野が一気に広がり、次のような利点があります
• インライン化が容易: 減圧時間が不要で、生産ラインに直接組み込み可能
• コストダウン: 真空チャンバー不要で、設備費を大幅削減
• 対象素材の拡大: ポリマー、有機物、繊維、液体など、減圧に不向きな素材にも照射可能
• 導入の容易さ: 卓上・手持ちタイプなどの小型装置も製作可能
大気圧プラズマの主な効果と応用
1. 洗浄・活性化
素材表面の微細な有機物や不要な元素を分解・気化させ、従来洗浄では除去できない汚染物を除去します
2. 表面改質
素材表面の分子結合を切断・再結合させ、表面組成を変化させます
3. 親水性の向上
表面に水酸基(−OH基)などを付与し、液体が弾きにくくなる「親水性」を付与します
撥水性が高い素材でも、接着性・印刷性を向上させる効果が期待できます
(※効果は素材により異なります)
4.化学変化の促進
対象素材を活性化させ、様々な化学的変化を促進します
従来工法との比較優位性
UV処理、オゾン処理、薬液処理などと比較して、数秒以内の短時間で同等の効果を得られる素材もあります
これにより、設備コスト・生産コスト・環境負荷の低減など、多面的なメリットが期待できます
新たな接合技術への応用
素材によっては、接着剤を使わずに接合したり、融点以下の温度で接合することも可能です
これにより、全く新しい製造技術が実現します
広がる大気圧プラズマの可能性
大気圧プラズマは、真空プラズマでは扱えなかった水分や気体を含む素材・液体・ゲル状素材にも照射可能です
熱や電気的ダメージ(注*)をほとんど与えずに処理できるため、応用分野は急速に拡大しています
工業以外での利用分野
設備が安価で手軽に使用できるため、様々な分野で使い始められています
• 大学・研究機関
• 農業・水産分野
• 医療・美容
• 有害物質の処理
• 遺伝子工学
今後も、大気圧プラズマ技術によって、新素材・新加工方法・新技術が次々と誕生していくことでしょう
(注*)電圧・温度について
• ダイレクトタイプ: 対象物に約10kVの電圧がかかります。静止した状態で照射を続けると表面温度が100℃以上になります
• プラズマジェットタイプ: 活性ガス温度は約60℃で、電気的には中性です
弊社の取り組みとサービス
弊社では、この最先端技術をお客様に実際に体験いただけるよう、小型大気圧プラズマテスト機の
「初回1週間・無償レンタルサービス」を実施しております
お客様とともに新しい用途や応用技術を創出できるよう、日々開発を進めています
装置開発・用途検討に関するご相談も歓迎しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください


熱プラズマ 金属切断加工


未処理 ←
→ プラズマ処理
プラズマ照射による親水性向上効果、表面改質効果により、塗装、メッキ、接着、接合、吸水性素材等の品質向上が期待できます
その他にも、ドライ洗浄、新素材や工法の開発、接着剤を使用しない接合、微細粉末の水溶化、有害ガスの分解、殺菌、水質浄化、農業や医療等への利用も研究されており、様々な用途に応用できる可能性があります

弊社での接触角解析法はEllipse (Tangent-1)を使用しています
水滴にかかる重力の影響等を考慮して、水滴の左右を独立した楕円として素材接触部の角度を正確に計測する解析法のため、一般的な1/2θ法と比較すると1~5°大きな 数値となっています(技術情報ページ参照)
ABS、PET、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス、金属などは良好な親水化変化が見られます
(*素材メーカー、グレード、表面状態により親水化の数値は大きく変わります。必ず現物での効果確認が必要です)
大気圧プラズマによる表面改質効果の注意点
大気圧プラズマジェットを用いた表面改質を検討される際は、以下の2つの重要な特性にご留意ください
1. 反応は素材の「表面層」で起こります
大気圧プラズマジェット照射による表面改質効果は、素材表面の非常に浅い部分でのみ反応が起こります
したがって、同じ名称の素材であっても、その表面にコーティング、防錆処理、酸化膜などが存在する場合、プラズマは
母材(無垢の素材)ではなく、それらの表面層に対して反応します。 その結果、無垢の素材とは全く異なる表面改質結果と
なる可能性があります
2. 「親水化効果」と「接着性などの改質効果」は必ずしも一致しません
接着、粘着、塗装などの実用的な用途においては、プラズマ照射によって素材表面に起こる反応と、使用する接着剤や塗料
などとの相性が最も重要となります
この実用的な効果(接着性の向上など)は、必ずしも親水化効果(水との濡れ性の向上)と一致するとは限りません
【具体例:シリコーンゴムへのプラズマ効果】
シリコーンゴムは、低温大気圧プラズマを短時間照射しただけでは、親水化効果はほとんど見込めません
しかし、シリコーンゴムは短時間での親水化効果が低い一方で、大気圧プラズマ照射による「接着剤レス接合」や「接着力
の強化」といった表面改質効果は短時間照射でも大きく現れます
この事例は、必ずしも「親水化の度合い = プラズマ処理の効果」ではないことを明確に示しています
重要なのは、最終的な目的(接着、塗装など)に対して効果があるかどうかです
また、同じ液体であっても、水以外の液体では、プラズマ照射後の反応が違った結果になることがあります
親水化効果と目的効果の不一致例
シリコーンゴムの 親水化 ≠ 表面活性化
プラズマ照射によるシリコーンゴムの接着剤レス接合 強度テスト


未処理 プラズマ照射後
シリコーンゴムの親水性変化
短時間のプラズマ照射では親水性の
変化はほとんどありません
* 長時間照射を行うと接触角は10°以下まで下がります
しかし、プラズマ照射面
同士を圧着すると



照射前はまったく張り付く気配も無かった
アクリル系粘着テープも実用強度になりました
接着剤無しで強力に接合できました
プラズマによりシリコーンゴムの
表面が改質、活性化されています
*常温でも接合可能ですが、加熱することで短時間で強力な接合が可能になります
ポリカーボネートの 親水化 ≠ 親油化
ポリカーボネートやPETなどはプラズマ処理を行うと親水化しますが、油等は素材との組合せによって撥油性を示すことがあります
親水性に対して親油性、接着力など変化は必ずしも一致せず、対象素材の組み合わせによっては、全く逆の反応を示す場合があります

親水化しました

潤滑油は弾くようになりました
シリコーンゴムに大気圧プラズマジェットを長時間照射することで、接触角を10°以下まで低下できることが
確認できました
この状態のシリコーンゴムは常温での接着剤レス接合が可能なことも確認できました
New


プラズマ照射前
接触角109°

プラズマ照射後
接触角約2°
アクアが採用する "誘電体バリア放電式" 大気圧プラズマ
高電圧のかかった2枚の金属電極を近づけると、電気の流れやすい部分から雷状の放電が起こっ てしまいます
1. プラズマ発生の基本原理
向かい合った金属電極間に高電圧をかけると、マイナス電極からプラス電極へ
向かって、大きなエネルギーを持つ電子が高速で移動します。
この電子が電極間に存在する気体原子に衝突したり、その近傍を通過したり
すると、気体原子内の電子がエネルギーを受け取って原子核の束縛から離れ、
外部へ飛び出します。
この現象を「電離」と呼び、電離によって生成されたイオンと電子が混在する
状態が「プラズマ状態」です。
2. 大気圧下での課題
しかし、大気圧(常圧)の空気中で高電圧をかけた電極とアース(接地)電極
を近づけると、特定の最も電気が通りやすい箇所に電子が集中してしまいます。
その結果、雷のような強力な「アーク放電」が発生し、広範囲で均一なプラズ
マを安定して発生させることが困難になります。
3. 弊社のアプローチ:誘電体バリア放電方式
そこで弊社のプラズマ電極では、このアーク放電を抑制するため
「誘電体バリア放電方式」を採用しています。
これは、金属電極の一方または両方を誘電体(電気を通しにくい絶縁物)で
覆う構造です。
この構造に交流の高電圧を印加すると、電極表面に一時的に電荷が蓄積される
ことで過度な電流集中が妨げられ、アーク放電の発生が防止されます。
これにより、電極の全面から電子が広く分散して放出され、大気圧下でも安定
した均一なプラズマを生成することが可能となります。
実験 アーク放電・ストリーマー放電・グロー放電




